【 この世界から消える会? 】 (2008/08/08)

 眼…が、私に向けられる。
生きることが辛い眼、何故生きているのか分からない眼、
死にたいけど生きてる眼…。

 さて…どうしたものか………

 とあるコミュニティで、私は奴らと出合いました。
自分では死ねない、誰かに殺して欲しい。
そんな人達。 他殺志望者、他殺で死亡したい者。
私は他殺志願者。 ペンネームは「他殺@志願者」
どちらの意味にもとれるけど、動機の違いもさほどない。

利害関係の一致。
殺されたい人と、殺したい人。

けどそんな眼で私を見ないでほしい…
今日は帰りたい気分、です。

「消える会の皆さん、また今度にしませんか?」
とは言えない空気。

「分かりました。では、移動しましょう…」


 彼、又は彼女らが自殺ではなく、他殺を望む理由。
自殺は周りに迷惑をかけるが、殺人鬼に殺されたなら家族は世間に同情してもらえる。
だいたいそんな感じ。

私は殺人鬼を演じる。演じる…?


 東京駅から電車で約二十分。
人通りの多い街。
楽しそうで平和そうな通行人。むしろこいつらが死ぬべきではないかと思う。

「では皆さん、いろんな意味でお疲れ様でした。散らばってください。余り遠くへは行かないでくださいね」


 電車の中で…、奇妙に連帯感のある集団の中で聞き耳を立てていた。
会話に混じる、消えたいという言葉。

これから私が消してあげるから…
命を消すことで、命を救ってあげられる。
なんて。少しだけ高貴な気分。
偽善者共の気持ちはきっとこんな感じなのでしょう。

コロス標的は、腕に赤い輪を巻いてる人。
無差別殺人を装ってはいるけど、死んだ人間が同じコミュに入ってたら、いつかバレるでしょ。
どうでもいいけど。

一応、服装や顔も何となく覚えた。大丈夫。もし間違えても、命の救済だし。

まずはその場で軽くストレッチ。
たぶん全員は無理…かな。
あと…、刺しても救えなかったら本気でごめんなさい。

 息を吸って、止めて、自分の内側が抉(えぐ)られる感覚を思い出す。
恐怖、怒り、絶望、消えたい…
とある報道機関の近くで買ったナイフを取り出す。
カールシュリーン社製のサイバイバルナイフで、刃も柄も黒っぽい。
価格は一万六千円。
頭の中で殺陣(たて)をシミュレートする。

これから私は自分と同じ消えたい人間を殺さなければならない。

試しに、そのナイフで自分の腕を切ってみた。
あまり痛くない。興奮の為かな?
結構血が出てきた。
一般人が気付いて騒ぎ出す。
そこから先は、覚えていない………

 自分が…病院のベッドで寝かされていることに、気付く。
側で泣き声が聞こえる。

「誰か死んだ?」
その泣き声に訊いてみた。

ベッドから落ちそうなくらいぶん殴られました。

Fin...


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