【 ブタさんと幸せな男の子 】 (2004/3/3)
ブタさんは、いつものようにお散歩をしていました。
テクテクテクテク。
青空を見るのが大好きなブタさんは、お散歩が大好きです。
テクテクテクテク。
今日は大きな木の影で、お昼寝をすることにしました。
草むらに寝そべり、若草の香りをお腹いっぱいに吸い込みます。
ブタさんは、青空を見ながら気持ちよく眠りました…。
しばらくすると、音色のような声が聴こえてきました。
コオロギさんの声です。
コオロギさんは言いました。
「ブタさん、ブタさん、人間がこっちにくるよ」
見ると、麦わら帽子をかぶった可愛いらしい男の子が歩いてきます。
コオロギさんは言いました。
「早く逃げないと捕まっちゃうよ」
ブタさんは言いました。
「どうして? 大丈夫だよ。 だってあんなに楽しそうに笑っているもの」
男の子はブタさんに、何やら楽しそうに話しかけています。
ブタさんは言いました。
「ほらね、きっとこの子、ボクとお友達になりたいんだよ」
ブタさんは、男の子について行くことにしました。
心配になったコオロギさんは、ブタさんの背中に飛び乗り、一緒について行きました。
しばらくすると、木造の家が見えてきました。
ニワトリが柵の中に、1、2、3・・・、たくさんいます。
ブタさんには、とても楽しそうに見えました。
ブタさんは男の子の家に入ろうとしましたが、中には入れてもらえません。
そのかわり、家の近くにある古小屋に案内されました。
男の子はブタさんをその小屋に入れると、大喜びで誰かを呼びに行ってしまいました。
コオロギさんは言いました
「ほら捕まっちゃった。 だから逃げようって言ったのに」
「どうして? だってあの子、凄く喜んでたよ。 それに、あそこを見てみて」
コオロギさんが小屋の隙間から外を見ると、
さっきの男の子が、お父さんに褒められ、とても誇らしげに笑っていました。
「ね、すごく幸せそうだよ」
…コオロギさんも、不思議と幸せな気持ちになりました。
でもきっと…、ブタさんがもう一度、大好きな青空を見ることはないでしょう。
お腹の空いたコオロギさんは、小屋を抜け出し、暖かいお家に帰りました。