【 心電図 】 (2002年頃製作)

「ピ、ピ、ピ」
私は時限爆弾を持って、追ってから逃げていた。
ふいに違和感を感じ、そして気付く。

「そうか、これは夢だ」
全てを悟った私は、追いかけてくる悪党に爆弾を投げつけ、遥か彼方へ吹き飛ばす。

私は、いつの頃からか夢を操る事ができるようになっていた。
夢だと気付きさえすれば、どんな悪夢も好きな夢に変えられる。

「さて、今日は何をしようか」
早く決めなければ夢から覚めてしまう。
今までは、リアルな世界では味わえないような幸福を体験してきた。
しかし、そんなモノにももう飽きてしまった。
普段は出来ないような体験…。

「そうだ、死んでみよう。 死を体験してみたい」
そして私は銀色のナイフを取り出し、自分の胸へと突き刺す。
痛くない、血も出ない。 死ねない…。
「そうか、”死のう”と思わなければダメか」

そしてもう一度、今度は巨大な鉄球を頭上高くに思い浮かべた。
『死ぬ』と念じ、鉄球を落下させる。
鉄球が目の前に迫り、そして…。
身体が粉々に砕けるのを感じた。
「あぁ、これが、死か……」

「ピ、ピ、ピー……」
病室で心電図の音が消えた。
「19時32分、ご臨終です」
と、看護婦が報告する。
つい先程、交通事故で運ばれてきた患者が息を引取った。



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