【 VAZIAL SAGA - UTOPIA - 】

寓話 「理想郷 (ユートピア)」

神様は、一部の人間に理想郷を与えることにしました。

まずは、外の世界から隔離した場所を造り、そこへ人間達を住まわせます。

人間が食べ物に不自由しないよう、
飲むだけで空腹が満たされ、若さを保ち、健康でいられる”湖”をつくりました。

その水は、人間だけでなく、植物を潤し、空気もきれいにします。
身体にかけるだけで、汚れが取れ、傷が治り、とても良い香りに包まれます。

また、法律を無くし、自由に生きられるようにしました。
気候は常に心地よく、衣服は必要ありません。
働く必要も無く、病気にもならず、男女は誰とでも交われます。

人々は、この理想郷に感謝し、生きることを楽しみました。

しかし、何ヶ月か過ぎると、人間達は不満を持つようになりました。
それは、人間が持つ、妬みや嫉妬から生まれる感情でした。

神様は、人間から男女の種別を無くし、その原因を取り除きます。
そして子孫を残せない代わりに、永遠の命を与えました。

暫くすると、また人間達から不満の感情が現れます。
調べてみると、綺麗な者が醜い者を虐げていました。

神様は、表面の差異を無くし、人間の形状を均一化します。

これでやっと、人々から不満の感情が消えました。

暫くして神様が理想郷を眺めると、人々は皆、あの湖にプカプカと浮き、じっとしていました。
それは神様にとって、とても綺麗で完璧な理想郷でした。


[ TOP PAGE ]
(C)StudioGIW